血液は、心臓から全身の細胞へ動脈という道を使って送り出され、静脈という道を使って心臓に戻ります。心臓に戻る血液は、重力に逆らって心臓に戻らなくてはいけないための、ふくらはぎの筋肉がポンプの役割を果たします。人間の下半身には全体の7割もの血液が集まっていて、ふくらはぎの筋肉が動くことで血液を心臓に戻します。つまり血液を心臓に戻すには、ふくらはぎの筋肉を伸び縮みさせる必要があります。これがなんらかの理由でうまくいかなくなるとふくらはぎで血液が停滞して足がむくみます。
むくみの原因には、生活習慣、運動不足による筋力低下、過度なダイエットなどの一過性のものから、心臓・肝臓・腎臓の障害、リンパ浮腫、下肢静脈瘤などの慢性的なものがあります。
などに注意し、これらの症状があれば、是非ご相談ください。
一過性のむくみの原因に当てはまらず、数日間むくみが続くような場合には病気の可能性もありますので、できるだけ早めに病院を受診しましょう。
慢性のむくみには以下のような病気の可能性もあります。
心臓に何らかの障害があるために、心臓がポンプの役割を正常に果たせなくなり、血行が悪くなってむくみを引き起こすことがあります。いわゆる「心不全」といわれる状態です。
血中にはアルブミンというたんぱく質があり、血管に水分を取り込んだり排出したりしながら浸透圧を調整する役割を担っています。肝臓や腎臓に何らかの障害があると、このアルブミン量が低下し、血管での水分調整が効かなくなってしまい、むくみの原因となります。
血管と同様に全身に張り巡らされたリンパ管を流れるリンパ液が、何かの原因により流れが滞り、四肢に溜まって浮腫む状態をいいます。原因としてはがんの術後に起こるものが多いです。大腸がん、子宮がん、乳がんなどの手術では、リンパ節を切除したり、放射線治療をして癌の転移を防ぐ治療を行います。その際、リンパ節やリンパ管の切除や損傷が生じ、手や足のリンパ液の流れが悪くなって浮腫みが生じます。がんの手術後すぐに発症する人もいれば、5年後、10年後に症状が突然現れてくることもあります。
また原因が特定できないリンパ浮腫は特発性リンパ浮腫と言われています。残念ながら、リンパ浮腫は自然に治ることがない病気です。急に悪化して急性リンパ管炎をおこすと熱を持ったり痛みを感じたりします。
足の静脈には一度心臓に向かった血液が逆流して足に戻ることを防ぐ静脈弁がついています。その静脈弁が壊れて、逆流した血液が足に溜まってしまう病気が原因となることがあります。
長時間のバスや飛行機に乗ったり、病気で寝たきり状態など、同じ姿勢を取り続けた後に足の静脈に血栓ができることがあります。足の静脈に血栓ができると静脈が心臓に戻りにくくなり、足はむくみます。足に血栓ができるのを予防するには、水分摂取や足を動かすように努めるほか、弾性ストッキングを履くことも有効です。
治療は薬物療法・理学療法・生活習慣の改善があげられます。問診や血液検査・エコー検査・CT検査などを施行しながらむくみの原因を診断し、症例に合わせた治療が重要となります。
・利尿薬
水分の貯留傾向が著しいむくみに限定して慎重に用いることが大事です。作用が弱い利尿薬からはじめて徐々に増量しますが、浮腫の程度が強く進行が速いときは、効果が強力なループ利尿薬、中でも副作用の比較的少ないフロセミドを使用することが多いです。
・漢方薬
漢方では、むくみは冷えにもつながると考えられ、利水剤とよばれる体内の水分分布を調節するような処方が中心となります。体力や胃腸機能などを考慮して、以下のような漢方薬を処方します。
①五苍散
②真武湯
③当帰芍薬散
④半夏厚朴湯
これらの漢方薬は単剤として用いたり組み合わせたりしながら使用します。むくみに対しては1〜2力月で効果が現れることが多いとされています。
静脈疾患が原因のむくみや、リンパ浮腫などの場合には、むくんだ足に弾性ストッキングを装着して積極的に歩行や運動することが望まれます。また、リンパ浮腫の場合は、リンパ管炎を起こさないよう患部を清潔に保ち、マッサージを併用することも有効です。
内臓疾患による浮腫みの場合には、心負荷の軽減のために、安静にすることが望まれます。またナトリウム貯留による体液量増加が疑われる際には、塩分制限も必要です。浮腫が高度な場合には、水分制限も併せて行います。
冷え症とは、手足の先や体全体が異常に冷たく感じてしまい、体調不良や不眠などの不快な症状を訴えるもので,冬に多い症状です。交感神経の緊張が亢進するため末梢の血管が収縮し、血流が低下している状態のことです。気温とは関係なく体が温まらないので、真夏であっても冷え症の症状は出ます。
冷え症には日々の生活習慣が大きくかかわっており、運動不足、食生活の乱れ、ストレス、自律神経の乱れ、鉄分不足やホルモンの乱れなども原因と言われています。
このような症状がある方は、冷え症の可能性があります。
冷え症は病気だと認識されていない方が多いですが、そのまま放っておくと身体の様々なところに不調が出てきます。
たかが冷え症と言わず、しっかりと対策をしましょう。
運動不足は身体の代謝を低下させ、血液の循環を悪くする原因となります。また、筋肉量が少ないと体内で熱を生産することが出来ず、うまく体を温められません。特に女性の場合、男性よりも筋肉量が少ないので熱を作りにくく冷えやすい体質だと言えます。
・筋肉量が少なく脂肪が多い:
女性は男性に比べ筋肉が少なく、また付きにくくなっています。そのため熱を作る力が弱く、また脂肪が多く付きやすくなっています。脂肪は一度冷えると温まりにくい性質を持っているため、冷えの原因となります。
・女性は子宮や卵巣など血流の妨げとなる内臓が多いため、腹部の血流が悪くなります。また、月経時に血液が減るため、熱を伝える血液が体の末端まで届きません。
・薄着や衣類のしめつけ:
寒い場所でのスカートなどの薄着は、体を冷やしてしまいます。また、下着やタイトな衣類での締め付けも血流を悪くし、冷え症の原因となります。
冷たい飲食物や甘い物、ファストフードやスナック菓子を食べすぎることや、無理な食事制限を伴うダイエットによるミネラル・ビタミン不足に陥ることで、体を冷やし、血液をドロドロにして循環を悪くする原因となります。
過度のストレスをため込むと、末端の血流が悪くなり血行不良を引き起こします。また緊張状態が続くと交感神経が長時間働き、自律神経のバランスが崩れてしまいます。それにより体温調節機能をうまく働かなくなり、冷え性が悪化する要因となります。
自律神経は、体内での体温調節の役割を担っています。暑くなると血管を拡げて体温を逃がし、寒くなると血管を縮めて体温を逃がさないように働きます。しかし、現代の冷暖房が整った住環境の中では、「暑い」「寒い」の感覚が鈍くなり体温調節の機能がうまく働かなくなってしまいます。それが毛細血管を収縮させ、冷えの原因の一つとなっている可能性があります。
タバコは急激に血管を収縮させてしまい、血液の流れを悪くするとともに、基礎代謝も低下させ、冷えに結びつきます。
腸内でぜん動運動が行われていないということで、基礎代謝も低くなります。
冷えと言ってもいくつかの種類があります。その種類によって改善方法や対策が違ってきます。
交感神経が緊張し手足の血管が収縮すると、血管が細くなるため血液が手足の末端部分まで届きません。そのため、手足の末端が冷えてしまいます。だからと言って、手足だけを温めようとしてもこのタイプの冷え症は改善されません。人間の体は、まず内臓を温めようとして、体の中心に血液を集中させます。その結果、末端である手足には十分な熱が行き渡らなくなってしまうので、まずは腹巻などでお腹を温めて体全体に熱が行き渡るようにしてみましょう。
下半身型は骨盤の歪みが原因である場合が多いです。姿勢の悪さや、同じ方向を向いての就寝、同じ方に足を組むことが原因で身体や骨盤が歪んでしまいます。それにより下半身の血行が悪化し、代謝が悪くなります。
さらにお尻や太ももに蓄積される老廃物がセルライトという固まりになってしまい、身体の冷えがますます酷くなります。常に正しい姿勢を意識し、半身浴などで代謝を良くしていくように心がけましょう。
ストレスとの関係が深い冷え症と言えます。自律神経が異常をおこし、手足の末端部分の血管収縮ができなくなり、その結果、内臓に血液を集めることができず、内臓が冷えてしまいます。内蔵型は、逆に手足は温かいことが多いので、冷え症だと気付かずに過ごしてしまうことも多いのです。しかし、お腹を下しやすくなった、体のだるさを感じる、風邪をひきやすくなった、などの症状を感じたら、このタイプの冷え性かもしれません。内臓の働きを良くして血行促進してくれる生姜などの体を温める食べ物を摂ることで、内臓の冷えを予防し改善することができます。
冷え症の改善方法としては、入浴・半身浴で体を温めることや適度な運動で血行を良くすることが挙げられます。また、生姜やネギなど身体を温める食べ物を意識して摂取するのも有効です。薬物治療であれば、ビタミンE投与で血行改善をはかったり、漢方薬を使用したりします。漢方薬は、患者さまの症状により選択しますので、ご相談ください。