血管にまつわる病気は様々あります。 足の動脈が狭くなったり詰まったりする「閉塞性動脈硬化症」、脳梗塞の原因となる「頸動脈狭窄症」、動脈が膨らむ「大動脈瘤」、動脈が破れる「大動脈瘤破裂」、血管の壁が裂ける「急性大動脈解離」、足の静脈に備わっている弁が壊れる「下肢静脈瘤」などが挙げられます。また身近な症状では、足の冷えやむくみを扱うことも多い診療科です。
血管外科で取り扱う上記疾患の多くは、外科手術の適応となります。大病院において多くの設備とスタッフを必要とし、高度の手術になることも多い領域です。一方、下肢静脈瘤に関しては日帰り手術での治療が可能な疾患になります。
当院では“下肢静脈瘤”に対する血管内治療、硬化療法が可能な設備を備えており、専門的に診断した上で、手術が必要と判断した場合には、日帰り手術にて治療を施行することが可能です。
それ以外の疾患についてはしっかり診断を行い、手術治療が必要である場合は提携病院または、ご希望の病院へ紹介いたします。もちろん手術後の体調管理・経過観察診療は当院で行うことができますので安心してご相談ください。
下肢静脈瘤とは足の血管(静脈)がコブのように浮き出たり、クモの巣のように細い血管が透けて見えたりする病気です。下肢のむくみやだるさの原因となる場合も多く、また、こむらがえりがよく起きて痛いと受診してくる方も多いです。
自覚症状を伴っている場合には、超音波検査を用いて専門的に診断し、必要と判断した場合には手術を行います。当院では血管内レーザー治療、硬化療法が可能な設備を備えており日帰り手術にて治療を施行することが可能です。
むくみも冷えも血液の流れが悪くなることで起こる症状です。季節や生活習慣などの一過性のものから、なんらかの病気や長引くストレスなど慢性的なものまであります。体質だから仕方がないとそのまま放っておくと、身体の様々なところに不調がでてきますので、なるべく早くにご相談いただきしっかりと対策していきましょう。
深部静脈血栓症とは、身体の深くに存在する深部静脈に血栓と呼ばれる血液の塊が生じる病気で、多くの場合は下肢の静脈に生じます。この血栓が血流に乗って肺動脈に詰まると肺塞栓症を引き起こし、大きな血栓が急に詰まると生命に関わる場合もあります。
通常は重力により下肢には多くの血液が滞りやすいのですが、下肢を動かすことで下肢の筋肉がポンプのような役割を果たし、血液を心臓に向かって送り返す働きをします。しかし、下肢の運動が制限されるような状況が長く続くと、血液の流れが下肢で滞ることになり、結果として血液が固まって深部静脈血栓症が発症します。いわゆるエコノミークラス症候群です。
一方、生まれつき血液が固まりやすい病気がある場合や悪性腫瘍がある場合、妊娠中や避妊薬などのホルモン剤を飲んでいる場合なども深部静脈血栓症を発症するリスクが高まります。
症状としては下肢の血液還流が滞るため、発症部位(多くは下肢)に一致して以下のような症状が見られます。
ただし無症状の場合も多くあります。
検査としてまずは血液検査が必要です。特にD-ダイマーの測定が指標になります。D-ダイマーとは血栓が形成・溶解されることによって生成される物質であり、血栓の存在を間接的に評価するマーカーとなります。当院では当日至急検査にて測定することが可能です。
さらに超音波検査、造影CT検査にて血栓の有無・範囲を確認することが重要です。
深部静脈血栓症で一番大事なことは、“肺塞栓症”を生じる可能性があるということです。足の静脈に形成された血栓がはがれると、血流に乗って心臓に到達し、その先にある肺動脈に詰まって肺塞栓症を引き起こします。大きな血栓が急に詰まると生命に関わる場合もあります。
肺塞栓による症状は、小さな血栓の場合には無症状の場合もありますが、主として以下のような症状が見られます。
深部静脈血栓症・肺塞栓症の治療として症状や画像所見を合わせて治療法が選択されますが、主として以下のような治療があります。
まず深部静脈血栓症の診断がついた時点で抗凝固療法を開始します。血栓がさらに発生することを防ぎます。必要により血栓を溶かす血栓溶解療法が検討されます。
下肢の皮膚色調が悪くなり痛みを伴う場合には、血栓症により下肢に重度の血流障害が生じている可能性があります。早急に血栓を取り除く必要がある場合には、カテーテルによる血栓吸引療法や手術による血栓摘除術の適応になりますので、関連施設に緊急で紹介させていただきます。
深部静脈血栓症の場合、肺塞栓症に至る前の早期発見・早期治療が大切です。前述のような症状がある方は早めの受診をおすすめいたします。
足の血管の動脈硬化が原因となり生じる疾患です。
動脈硬化とは「動脈が硬くなる」ことで、血管の特性であるしなやかさが失われるため、血液をうまく送り出すことが困難になります。喫煙、糖尿病、高脂血症、高血圧、肥満、加齢等が動脈硬化の危険因子と言われています。
生活習慣の欧米化により、急速に患者は増えています。その中でも50歳以上の男性で、特にヘビースモーカーに起こりやすいとされています。動脈硬化が原因であるため、その危険因子である高脂血症、高血圧、肥満、糖尿病などがある人や喫煙の習慣がある人は年齢性別にあまり関係なく、発症の危険性があります。
この動脈硬化により血管が狭くなったり詰まったりすると、下肢の筋肉が運動時に必要とする血流を十分に維持できなくなるため、筋肉が悲鳴をあげ足の痛みを感じます。特に坂や階段を上る時などに下肢に負荷がかかるときに現れやすく、このような症状がある人は閉塞性動脈硬化症の可能性が高いと考えられます。
当院では、血液検査で全身状態を評価し、危険因子を確認し、血圧脈波検査にて手足の血流のバランスを評価し、下肢の血流の低下がないかどうか診断します。血流の低下や高度動脈硬化を認めた場合には、血管超音波検査にて血管の状態を調べたり、血管の動脈硬化や血管の詰まりを確認するCT検査を行って、より詳細に検査を行います。
以上の検査を行い、血管の閉塞部位・範囲・性状を確認した上で、
・栄養・運動療法と日常生活の改善
・薬物療法(抗血小板剤・血管拡張剤・抗凝固剤 など)
を行うとともに、血管内治療やバイパス手術などの治療が必要な際には関連施設やご希望の施設にご紹介いたします。退院後は病院と連携しながら、当院で経過を診ていくことが可能です。お気軽にご相談ください。
頸動脈は心臓から脳へ大量の血液を供給する主要な血管です。その頸動脈の内腔が動脈硬化で細くなってくる頸動脈狭窄症は、近年増加傾向にあります。
脳梗塞とは脳の血管がつまって起きる病気で、脳卒中の中で最も多いこ知られています。以前、日本人では頭の中の血管が細くなって起きる割合が多いと言われていましたが、最近では食生活の欧米化によって頚動脈の内腔が細くなり、そこに血の固まり(血栓)ができて脳梗塞を起こす割合が増えてきたと言われています。
頸動脈は「内頸動脈」と「外頸動脈」に分かれていきます。その分かれ道となる部分を頸動脈分岐部といいます。動脈硬化が進行すると、この頸動脈分岐部には血流の乱れが起きやすいため、血管壁に悪玉コレステロールが沈着してプラークという固まりを作りやすくなります。その結果、肥厚したプラークにより血管が狭窄し血液が流れにくくなったり、狭窄部の血管壁に血栓がくっついて頸動脈閉塞を起こします。さらに非常に軟らかくて脆いプラークや、付着した血栓が血管壁から剥がれて血流に乗って流れていき、脳の血管を詰まらせ脳梗塞を起こすことがあります。
頸動脈部分の超音波検査“頸動脈エコー”では、頸動脈壁のプラーク(かたまり)の状態や、狭くなってしまった狭窄部分の血流の速度なども確認することができる検査です。この検査によって、頸動脈の状態と脳梗塞の危険性を評価することが出来ます。
手術やカテーテル治療の適応があると判断した場合には、関連施設やご希望の施設にご紹介いたします。退院後は病院と連携しながら、当院で経過を診ていくことが可能です。
その他にも、動脈硬化が原因となる心筋梗塞や脳梗塞、大動脈解離などの命にかかわる病気が発症する危険度を頸動脈の状態から推測することができます。
頸動脈エコーは、超音波を用いており、放射線による被曝がないため、体への害はありません。痛みもなく、約10分程度(検査箇所による)で終了する簡単な検査ですので、定期的に観察することをお勧めします。
高血圧、動脈硬化を主な病因とし発症するもので、大動脈の壁の一部がコブのように拡張するものです。胸部大動脈に発症するものを胸部大動脈瘤、腹部大動脈に発症するものを腹部大動脈瘤とよびます。中には胸部大動脈から腹部大動脈にかけて広い範囲で動脈瘤を認める胸腹部大動脈瘤もあります。一般に大動脈瘤はよほど大きくならないかぎり無症状で、破裂して初めて気づかれる例も多いです。
大動脈瘤の最大径が腹部で5cm、胸部で6cmを超えると破裂の可能性が高いとされ、手術適応となります。腹部大動脈瘤手術の死亡率はほぼ0に近いのですが、胸部大動脈瘤は5~10%くらいとなります。むろん破裂してからの手術では危険はずっと高くなります。最近では血管内治療(ステントグラフト手術)が多く行われ、手術もより低侵襲で安全になってきていますが、早期の診断・対策が何よりも重要な病気です。
動脈硬化のある人は、血管エコー検査・胸部や腹部CT検査にて動脈瘤の有無や血管の石灰化の状況を評価しながら、定期的に検査・管理するとともに動脈硬化の危険因子を治療することが重要です。
急性大動脈解離は、突然大動脈の血管壁に亀裂がはいり、大動脈全体にわたって一気に裂け目が広がるもので、突然の激しい胸痛、背部痛を生じます。病状は重篤で裂け目が及んだ場所により多彩な症状を呈す非常に危険な疾患です。心臓に近い部分に裂け目が生じる場合をスタンフォードA型、脳の血管より先の胸部下行大動脈以下に裂け目がある場合をスタンフォードB型といいます。
A型急性大動脈解離は、心タンポナーデという心臓周囲への出血を引き起こし生命の危機に直結するため、緊急手術の対象となります。B型急性大動脈解離は、比較的落ち着いて経過をたどることが多く発症時期に手術を必要とするのは5%以下で、多くは血圧を下げる降圧療法が中心となります。しかし解離の影響で下肢の麻痺や血流障害、腹部臓器症状などを生じた場合には重篤となります。降圧療法にて病状が落ち着いても、少しづつ解離した血管の一方(偽腔)が拡大することもあり、大動脈径が6cm前後まで拡大すると破裂の危険性から手術が必要になります。
先天的に動脈壁の弱い方もいますが、多くの場合は動脈硬化と血圧コントロールの不良があげられます。発症すると突然死の可能性もあり、日頃からの動脈硬化管理、血圧管理が発症を予防する唯一の方法となります。
脳梗塞は脳の血管が詰まることによって、脳に栄養や酸素が届かず組織が部分的に死んでしまう病気です。また、血管が破れることにより引き起こされるのが脳出血やくも膜下出血です。これらをあわせて脳卒中と言います。脳卒中の中で一番多いのが脳梗塞です。
原因としては、生活習慣病、心臓病などの基礎疾患、肥満、喫煙、過度の飲酒、ストレス、脱水症状、運動不足、加齢、遺伝など多くの原因があります。これらの危険因子が重なりあうことで、よりリスクが高まるため、生活習慣病や動脈硬化と繋がりが深い病気といえます。
脳梗塞の兆候として以下の症状が挙げられます。